安全教育のあと、受講者がこう言ってくれることがあります。
「分かりました」
「気をつけます」
「意識します」
講師としては、手ごたえを感じる瞬間です。
でも数日後。
現場の動きを見ていると、元に戻っていることがある。
これは珍しいことではありません。
まず結論から言うと、これは受講者の「やる気」が足りないからではありません。
やる気があっても行動できないのは、仕組みが整っていないことが多いからです。
1.やる気は「気持ち」でも、行動は「手順」
やる気は「気持ち」です。
でも行動は「手順」です。
受講者が「よし、気をつけよう」と思っても、
具体的に何をどう変えるかが決まっていなければ、動けません。
「注意する」
「気をつける」
「意識する」
この言葉は気持ちとしては立派ですが、行動の形がありません。
行動に変えるには、最低でもこれが必要です。
「何を」
「いつ」
「どこで」
「どうやって」
ここが決まると、初めて動ける状態になります。
2.現場は「いつもの流れ」で人を元に戻す
行動に移れない理由は、本人の問題だけではありません。
現場には、強い「流れ」があります。
忙しい
時間がない
周りがいつも通り
早く終わらせたい
この状態の中で、人は無意識に「いつもの動き」に戻ります。
つまり、行動を変えるには努力だけでは足りません。
現場の流れに押し戻されても、守れる形が必要です。
3.受講者は「自分の作業に置き換えられない」と動けない
安全教育の内容が正しくても、
受講者が自分の作業に置き換えられていないと行動につながりません。
受講者の頭の中では、こうなっています。
「話は分かった」
「でも自分の現場だと、どこが危ないんだろう」
「自分の作業なら、どう変えたらいいんだろう」
ここがつながらないと、やる気はあっても空回りします。
受講者は真面目だからこそ「正しい答え」を探して止まってしまいます。
4.「最初の一歩」が決まっていないと、行動は始まらない
行動は、一気に変わりません。
現場が変わるときは、いつも小さな一歩から始まります。
でも講習で多いのは、最後がこうなって終わることです。
「では気をつけて作業しましょう」
これだけでは、最初の一歩が決まりません。
行動を起こすには、講師側が「一つだけ決める」場面を作る必要があります。
ここが設計できると、受講者のやる気が現場に残ります。
作成のコツは、最後にこの問いを入れることです。
「明日から一つだけ変えるなら、何を変えますか」
「明日最初にやる確認は何ですか」
「あなたの作業で一番危ない瞬間はどこですか」
受講者がこの問いに答えた瞬間、
「やる気」が「行動の形」に変わり始めます。
5.講師がやるべきことは
「やる気」を「行動の形」に変えること。
安全教育は、聞かせることが目的ではありません。
受講者が自分ごとで考え、明日からの行動が変わることが目的です。
そして行動を変えるために必要なのは、
気合ではなく、動ける形です。
「何を変えるか」
「最初に何をするか」
「自分の作業でどこが危ないか」
これが一つ決まるだけで、現場は少しずつ変わります。
やる気があるのに行動できない受講者は、弱いわけではありません。
真面目で、変えたいと思っているからこそ止まっているだけです。
その背中を押すのが、講師の設計だと私は考えています。

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