「ベテランだから大丈夫」
その感覚、
一度立ち止まって確認してください。
熱中症で搬送される人の
約半数は50代以上です。
経験が豊富なことと、
身体が暑さに対応できていることは、
まったく別の話です。
1.加齢は「体温調節機能」を静かに奪っていく
年齢を重ねるほど、
身体の暑さへの適応力は
静かに、確実に低下していきます。
具体的には
発汗機能の低下
汗腺の数と機能が加齢とともに減少する。
同じ暑さでも、
若い頃より汗が出にくくなる。
体温を下げる最大の手段が、
静かに失われていく。
口渇感知機能の低下
脱水になっても、
「渇き」を感じにくくなる。
自覚なく脱水が進む。
循環機能の低下
心臓や血管の機能が低下し、
体の熱を皮膚表面へ運ぶ能力が衰える。
深部体温が上がりやすくなる。
これらはすべて、
本人が自覚できない変化です。
「いつも通り」と感じていても、
身体はすでに別の状態になっている。
2.「経験」と「身体機能」を混同するな
ベテランには確かに、
豊富な経験があります。
・作業手順を熟知している
・危険箇所を直感的に把握できる
・後輩への技術継承ができる
これらは本物の価値です。
否定するものではありません。
しかし、
経験年数が長いことは、
発汗機能の維持を意味しません。
加齢による口渇感知の低下を防ぎません。
心肺機能の衰えを止めません。
「ベテランだから暑さに強い」は、
経験と身体機能を混同した
根拠のない思い込みです。
3.「昔は平気だった」という成功体験の罠
ベテラン作業員ほど、
自分の感覚を信じています。
「昔はもっと暑い中をやっていた」
「これくらいならまだ大丈夫」
過去の成功体験が、
今の自分の体力を過信させます。
しかし、気候は昔より過酷になり、
自分の体は昔より衰えている。
過去の感覚に基づく自己管理は、
もはや機能しません。
「大丈夫だ」という本人の言葉を
そのまま受け入れることは、
信頼ではなく、管理の放棄です。
4.データを根拠に配置を設計する
では、何を根拠に配置を決めるべきか。
答えは、
感覚ではなくデータです。
・年齢
50代以上はハイリスク群として認識する
・健康診断の結果
血圧・血糖値・腎機能の数値を配置判断に活用する
・服薬状況
利尿剤・降圧剤・精神科薬などの服薬は
脱水リスクを高める
・直近の体調
睡眠不足・前日の飲酒・体重の急減は
その日のリスクを大きく上げる
これらを組み合わせた上で、
「誰を・どの環境に・何時間配置するか」を
組織として決定する。
経験を否定するのではありません。
経験に加えて、データを根拠にする。
それがプロの現場管理です。
5.「経験を尊重する」と「身体を守る」は両立できる
ここで誤解してほしくないのは、
経験を否定しているわけではない、ということです。
ベテランの知識と勘は、
現場にとって大きな財産です。
ただし
・高温環境の最前線で体を酷使する役割
・危険箇所の見極めや教育係として
現場を俯瞰する役割
この2つを混同してはいけないということです。
ベテランだからこそ、
一歩引いた位置から
若手を見守る役割にシフトしてもらう。
経験を前線ではなく、
現場全体の安全設計に活かしてもらう。
あなたの現場では今、
作業配置を決めるとき
何を根拠にしているでしょうか。
「経験年数」という感覚か。
「いつも元気そう」という印象か。
それとも、
年齢・健康データ・服薬状況・体調を
組み合わせた
構造的な配置設計か。
ベテランの経験は、
現場にとってかけがえのない財産です。
だからこそ、
データで守る必要がある。
感覚で配置し、データで守らない現場は、
いつかベテランを失います。

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